個展に寄せて

日展審査委員・東洋大学文学部教授 明石春浦


名門日本の刀匠二唐国俊を父に、七人兄弟の長女として恵まれた環境の中で育った秀香さん。
名はテツ。
まるで鋼のような強靭な心と、自愛溢れる優しさを持ち合わせた彼女は、津軽特有の女性像を思わせるような人であります。

このたび「吉澤秀香の世界U」個展を開催するとの話はかねてより伺っておりましたが、ご本人にはここ数か月、華甲に向けての創作に没頭されていたのではないかと思っておりました。

秀香さんは書歴も深厚で、「日展」をはじめ「毎日書道展」「創玄展」「県展」「中央書展」等で最高の栄誉賞を数多く受賞され、中でも「第四十一回毎日書道展」では最大の難関とされるグランプリ会員賞を受賞されるなど、近年は作品の錬度もかなり高く、高雅華麗な格調の高さも加わり、一作ごとに趣向も変え、油の乗り切った印象を受けております。

現在は上記各展などの審査員を勤める一方、「全東北書道連合六友会」副理事長、「青森県展」運営委員、「北門書道会」総務、「東北女子短期大学」講師、「NHK文化センター弘前教室」講師、「弘前社会保険センター」講師など幅広く活躍されております。

海外においてもミュンヘン、ウィーン、オッヘンバッハ、ユーロパリア、シアトル展など、日本の代表女流作家の一人として清爽和雅としたリズミカルな書線に、高い評価を受けておられます。

これが今日までの秀香さんであって、これから書の無限の世界にどこまで足跡を積み重ねられるのかが今後の課題であるのかも知れません。
これまでの刻苦精励に堪えた秀香さんだけに、期待も大であり、益々のご活躍を願う一人であります。